インタビュー

木製おもちゃ!プラントイジャパンの社長が語る。子どもとの関わりで最も重要な事とは?

プラントイジャパン
nakazawayuki

『子どもは、基本的におもちゃがなくても楽しめるし、伸びていけるんですよ。でもそこに、きっかけとなるおもちゃがあれば、さらに楽しい体験ができます。』

そう語ってくれたのは、タイの木製玩具メーカー「プラントイ」の日本総代理店
「プラントイジャパン」代表取締役 前畑謙次社長。

子どもの健やかな成長を願い、ご自身の子どももモンテッソーリ園に通わせていたという前畑社長ならではの視点で、プラントイ✖️モンテッソーリ教育の深い共通点や、子どもとの関わりにおいて、意識すべき重要な事についてお話ししていただきました。

99%自然素材の”プラントイ”とは?

99%自然素材の「プランウッド」は、玩具業界で唯一無二のサスティナブル素材!

ー中澤

本日はプラントイの製品や、製品に込められた想いについてお話を聞かせてください。

プラントイの製品はわが家でも長く使っていますが、何世代も使っているという友人もいます。長く愛される木製玩具ですね。

ー前畑社長

そうですか、それは嬉しいです。ありがとうございます。

ー中澤

まず、プラントイの製品はどのような特徴やこだわりがあるのか教えて下さい。

ー前畑社長

プラントイはタイにある木製玩具を制作する会社です。タイの南部、トランという町で、ゴムの木の廃材から製品を作ることから始まりました。さらに今は、木の株を掘り起こして、粉にして固めた「プランウッド」という素材を考え、植物由来の染料と混ぜて製品を作っています。

当初、保守的なドイツ人や業界の人は、プランウッドにあまり馴染まなかったときがありましたが、徐々にその良さを理解していただけるようになり、いまでは世界70か国に輸出され広まっていきました。 

ー中澤

成分にもこだわりがあるのですね。

ー前畑社長

とてもこだわっていますね。
私も輸入するにあたって、静岡県の工業技術センターで検査しましたが、 本当に99%の材料は木の粉で、ほんの少量の接着剤が入っているだけです。唯一、木製玩具業界の中でこのような材料を作っているのはプラントイ社だけです。

ー中澤

小さい子どもは何でも口に入れるので、親としても安心ですね。

ー前畑社長

メーカーによってはプラスティックが入っている木製玩具なんかも多いですが、そういったものとは全く違います。

ー中澤

自然環境への影響も考えられているのですか?

ー前畑社長

その通りです。通常は、木の廃材や株の部分というのは燃やすだけなんです。燃やして植え替えるのは手間も時間もかかって大変なことです。
でも株から掘り起こして使うことで、地球にも優しく無駄がなくなります。

今でこそサスティナブルな取り組みは多くの企業で当たり前になっていますが、プラントイは最初からサスティナブルで、自分たちの仕事を社会環境に還元していこうという考え方でしたね。

モンテッソーリ教育とのつながり

ー中澤

ところで、前畑社長は”モンテッソーリ教育”をご存知ですか?

ー前畑社長

ええ。私の子どもも2人、モンテッソーリ教育で育ちました。松浦学園に通ったんですよ。(松浦学園モンテッソーリ子どもの家:リンク

とても良いモンテッソーリ教育の園でした。

松浦先生が出版された本で、プラントイの製品を使った学びを紹介している本があります。ご縁があって本の制作に協力しましたが、わかりやすく目的と使い方を説明されていて、本当に子どもたちは集中してやっていましたね。

松浦公紀(著)学研プラス(出版)

ー中澤

そうなのですね!!すでにモンテッソーリ教育とコラボしていたのですね!!ぜひ読ませていただきます!

ー前畑社長

とてもわかりやすく解説されているのでぜひ読んで下さい。

ー中澤

確かにプラントイの製品は「微細運動」や「手と目の協応」、「数え」たり「分類」したり、モンテッソーリ教育とかなり通じる要素が多いと感じます。

多くの子ども向け製品は、必要以上にカラフルで様々な”知育”の要素が詰め込まれていて、それが逆に飽きやすくしてしまうように感じますが、プラントイの製品は色や触感が優しくシンプルなので、遊びながら子どもの発達に良い刺激や気づきを与えてくれますよね。だからこそ、飽きずに繰り返し遊べるのだと思います。

ー前畑社長

子どもに教え込むのではなく、あくまでも遊びを通じて”発達を助ける”という点がプラントイの製品でもよく考えられています。

子どもとの関わりで重要なこと

おもちゃより、まずは子どもの情緒が安定していることが何より大事。

ー中澤

プラントイのおもちゃは、子どもにどんな良い影響があると思いますか?

ー前畑社長

まず、子どもは基本的におもちゃがなくても楽しめるし、伸びていけるんですよ。
でも、そこにきっかけとなる玩具があれば、さらに楽しい体験ができると思います。何かを教え込む方法ではなくて、自然と、遊びの中で何かを発見するんです。

ー中澤

家庭の中で、遊びながら何かを発見できるということですね。

ー前畑社長

おもちゃより、まずは子どもの情緒が安定していることが何より大事です。

その上でいろんなことができるようになります。
例えば立派な数学者の中にも、天才だけど情緒が安定せず母親と離れられないような人もいるんです。そこで考えるべきことは「頭の良さとは何か」ということなんです。

今の日本は、知識の量が頭の良し悪しと判断されるような風潮がありますよね。詰め込み教育が当たり前になっていて、子どもが色んなことに「なんで?」と疑問を持つのは駄目かのような。

でも、本来子どもにとって学ぶことは楽しいことなんですよ。子供にとっての世界は、色んな疑問に溢れているんです。だから例えば、「数」の壁が高くなる前に、実際に触って、目で見て、「数を経験する」ことが必要なんです。

ー中澤

プラントイの製品は、その体験やきっかけとなる要素がありますね。

ー前畑社長

プラントイの人たちは製品を開発する上で、子どもの発達をどこかで援助できるものにしたいという思いがあります。ですから製品の箱には、どんな発達の援助が目的なのか、書いてあるんです(下写真)。今後、それはもっとわかりやすく日本語で伝えていこうと思っています。

ー中澤

モンテッソーリ教育でも、教具を一般家庭で購入してそれだけを子どもに教えたり、あるいは知育玩具をたくさん買い揃える風潮があり誤解が広がっています。

ですが家庭では教具を使ったりせず、プラントイのように、遊びながら感覚の発達を援助してくれる玩具があると良いなと私は思います。

ー前畑社長

親は、どうしても何かを教え込みたくなりますからね。私もそういう経験がありますよ(笑)。

まずは、今子どもが夢中になり楽しんでいることや、何に関心が向いているのかをよく見てあげないと。だから遊びを大事にしないといけないんですよね。家庭の中で、おもちゃは、その一つのきっかけでもあるんです。

ー中澤

モンテッソーリ教育で言う、子どもの「敏感期」を知るきっかけにもなりますね。

ー前畑社長

そうですね。

ー中澤

子どもの遊びを大事にするには、親はどんなことができますか?

ー前畑社長

大人も一緒に夢中になることが良いですね。お母さんが楽しんでなかったり、笑ってなかったら、子どもは楽しくないですよね。

ある一定の時期に、子どもはお母さんやお父さんと一緒に遊んで楽しかったという記憶や、そういう瞬間を共有した経験が、後に大変役立ちます。
人工的な環境よりも、自然の中にいろんな発見があるので、自然との関わりが本当に重要だと思います。

決して豪華な海外旅行じゃなくていいので。ちょっとそこまで散歩する、河原に行く、海辺に行く、公園に行くというような経験で良いんです。「一緒に散歩したね」「一緒に本を読んだね」というような、日常の楽しかった共有をどれだけ持てるかが大事だと思います。

子どもの一瞬一瞬が宝ですからね。

おもちゃの本当の役割とは

なんでもやりたい時期に、取り上げたりしないで安全なものを置いておく。

ー前畑社長

今は幼いうちからゲームが人気ですが、具体物がなくなってしまうような時代がきたら困りますね。
本来人間は、アナログなんです。人間の思考は、具体から抽象へ向かうのですが、具体物を理解する能力が備わって初めて抽象の世界を理解するんです。だから絶対に、良い具体物が必要。

そういう意味でも、プラントイの製品で楽しく遊んで欲しいですね。

ー中澤

親子の楽しい時間を共有するための一つの手段ですね!

ー前畑社長

そうですね。なんでもやりたい幼い時期に、危ないからと取り上げたりしないで安全なものを側に置いておく。そして、片付けまできちんとやる。それが習慣になれば、部屋がぐちゃぐちゃにならないです。そういった習慣は、教育以上のものですよね。

「よくできたね」「ありがとう」と褒めて、抱きしめてあげる。
子どもの気持ちが愛情によって満たされることが何より大事です。情緒が安定することがね。

ー中澤

プラントイの製品は、より良い未来に繋がっていますね。

ー前畑社長

今、学校教育の中でも、人間生活にとって大切な、”価値のある活動の時間”が軽視されているような状況がないでしょうか。

例えば、料理や裁縫などの総合的な家庭の仕事や、お花を育てたり、田植えなどの体験、木工などのものづくりなど、科学的な観点と掛け合わせて学習すれば、とても良い体験になるはずだけど、その時間がどんどん少なくなっているような気がしますね。 

それに加えてコロナ禍では、体験も会話も少なくなったり、マスクで口元も表情も見れなかった。それは子どもの教育にとって、本当によくないことです。

家庭の中で、伸び伸びと、様々な体験をしていくことが子どもにとって必要だと思います。おもちゃはその助けになるものの一つです。

未来のためにサスティナブル・プレイを考えよう!

子どもたちに良い環境を残すために、私たちは森を勉強して、自然と調和していく方法を考えることが大事。

ー中澤

最後に、サスティナブル・プレイを掲げる会社として、今後の目標を教えてください。

ー前畑社長

私たちは木製玩具を扱うものとして、サスティナブルとは何か?木はどこから生まれて、どのように育っていくのか?など、真剣に考えています。
世界の森林についてよく勉強して、「地球の環境を守ろうよ」と呼びかけています。今後もそのような考えや運動を広げていきたいと思っています。

ー中澤

私たち個人は、何ができるでしょうか?

ー前畑社長

やはり、関心を持つことですね。

日本は森林が豊かな国としては世界で3位です。でも今その森林はあらゆる問題によって危機にさらされています。プラントイの本社があるタイでも、バンコクで大雨が降るといつも洪水が起こるのですが、それは木が少ないからです。皮肉なことに、それが人間が作り上げてきた歴史の結果なんです。

子どもたちに良い環境を残すために、私たちは森を勉強して、自然と調和していく方法を考えることが大事だと考えています。

ー中澤

環境を大切にすることは、子どもや未来を大切にすることに繋がっているんですね。
本日は大変興味深いお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

あとがき

たくさんのモンテッソーリ教育との共通点を感じていただけたでしょうか。子どもと、環境への愛情がたくさんこもったインタビューとなりました。

今、知育としてのモンテッソーリ教育が広がり、家庭で学習指導のために教具を使うような、本来のモンテッソーリ教育の意味を見失っていることも少なくありません。

しかし、家庭で本当に大事なことは、親子の楽しい時間であり、様々な経験だと、今回のインタビューで改めて感じることができました。
プラントイの製品にはそのきっかけとなる要素がたくさん詰まっています。

私の娘も、1歳の誕生日プレゼントで購入したおままごとの野菜セットから始まり、いくつかのプラントイ製品で遊びながら育ちました。本当に飽きることなく、繰り返し遊びました。同じおもちゃで、何度も何度も。小学生になった今でも時々遊んでいます。

色合いはとても優しく、ころりとした触感で、デザインは洗礼されてシンプルに美しい。

木製なので、プラスチック製品のように「カチャッ」とハマらず、丸みがあるので多少の不安定さがあります。そして程よい重みがあるため、床に落ちたら「ゴン!」と音がします。そのため、大人が扱い方をいちいち注意しなくても、子どもは自然と丁寧に扱うようになるのです。丁寧に扱うから、愛着を持つ。愛着があるからきちんと片付ける。自分できちんと片付けたから、どこにあるかわかり、次に遊ぶ際にも手に取りやすく、繰り返し遊ぶ。

おもちゃで遊びながら”育つ”とは、そのようなサイクルを生み出すこととも言えます。

ぜひ一度プラントイの商品を手に取って、親子で木の温かみを感じてみてください。

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中澤有希
中澤有希
株式会社Trecce代表
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