インタビュー

<第3部>三浦先生が語るモンテッソーリ教育への想い~日本のモンテッソーリ教育の課題点と読者へのメッセージ~

nakazawayuki

東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンターの代表を務め、AMI3-6教師養成トレーナーの三浦勢津子先生に、Trecce代表中澤がインタビューを行いました。

3部構成の最終回。
今回は、未来を見据えた今後のモンテッソーリ教育についてお話頂きます。

第1部:モンテッソーリ教育との出会いからトレーナーになるまでの軌跡
第2部:モンテッソーリ教育への想いや、家庭でのモンテッソーリ教育のあり方
第3部:日本のモンテッソーリ教育の課題点と読者へのメッセージ

子どもが自己選択できる時間を増やしましょう

中澤有希(Trecce代表。以下、中澤):

今後の課題として、日本のモンテッソーリ教育に関して何か思うことはありますか?


三浦勢津子(AMI3-6トレーナー。以下:三浦先生):


基本である、子どもが活動を自己選択できる時間をもっと増やすべきだと思います。
モンテッソーリの教具を触っている時間や教具を提供している時間が「モンテッソーリの時間」ではありません。本来は自己選択ができる時間こそが「モンテッソーリの時間」なのです。

そう思えば、本当は園にいる時間がずっと「モンテッソーリの時間」であるべきです。


子どもが自由に自分のやりたいことを、環境の中から選ぶ時間がもっと必要なのです


例えば、子どもたちが自由に選択していても、集中力が落ちる時があります。それを私たちは、「偽りの疲労」(false fatigue)と呼びますが、その偽りの疲労が出たときに、子どもたちがざわついてるから園庭に出して遊ばせようとか、リトミックや英語の時間を入れようとすることがよくあります。


でも本当のモンテッソーリ教育の環境は、もっと子どもの自己選択がある。

集中力が切れる時はありますよ。大人にだってありますよね。そんな時は大人であれば、お茶にしようかな、とか他のことをするじゃないですか。それは子どもも同じで、疲れたらきちんと片付けられれば他のことをやっていいし、休んでいてもいいし、お友達とおしゃべりしてもいい。ただ、ほかの子の邪魔はしないということは守ればいいと思います。


そういう意味では、モンテッソーリ教育を取り入れている園からモンテッソーリ教育を全面的に行っている園がもっと増えることが目標だと思います。


英語で「チェリー・ピッキング」と言う言葉があって、ケーキの自分の好きなところだけ食べることを意味しているのですが、モンテッソーリ教育の気に入ったところ(あるいは理解できるところ)だけを取り入れるのではなく、

  • ・本当の自由とは何なのか
  • ・自分で選ぶとはどういうことか
  • ・自分で選んだものに対して、最終的には自己責任がある


このような本当のモンテッソーリ教育を私は伝えていかなければならないそれを実践してこその本当のモンテッソーリ教育だと思います。


いくら大人に講義しても、保育現場での実践を伴わないとモンテッソーリ教育が続いていかないと思うんですね。


モンテッソーリ教育を支えているのは現場の先生ですし、本物のモンテッソーリ教育を実践するのは一朝一夕にはできません。


海外では、一日中自由時間でなければならないし、最低でも3時間必要と言われています。自分で活動を選べる時間は、本当は一日中であるべきなんですよね。

「子どもをコントロールしよう」とする思考からの脱却


三浦先生:

まずは3時間の活動まで持っていくために、子どもをコントロールしよう、という考え方から大人が自由になる必要があります。

疲れたら休んでいても良いし、自由にしていて良い。でも他者の集中は邪魔してはいけないという基本の中で、実践できるのがいい。


そのためには先生が、「子どもにやらせないといけない」と思っていたらやっぱりできないです。

先生が「提供するのは楽しい、子どもたちが自分で活動を選べている、夢中でやっている、子どもたちは自立しつつある。こどもの発達を助けたい、いつまでも観察していたい。」という状況が出来てきたら、本当のモンテッソーリ教育が浸透していくのではないかと思います。

それが私の目標ですしそのような熱意を持っている人たちがコースで学んだ後、園に戻って、みんなで実践できるような、園長先生も理解してくれるような園が増えれば、次第に日本でもモンテッソーリ教師が育っていくはずです。

最近、熱意のある若い先生の意見を聞いてくれるような園が増えているので大変期待しています。また自分でこどもの家を開きたい、保育園をつくりたい、という人も増えていて、とても嬉しく思います。


中澤:

そういう園が日本に浸透して、今あるモンテッソーリ園ももっと根強いものになって、モンテッソーリ教育を本当の意味で提供していく園が増えることが課題なのですね。

そうなるためには、モンテッソーリ教育を学んだ教師が増えて、その方たちが現場を支えていくことが重要ということですね。

まずは自分が幸せになることが先

三浦先生:

厳しいことを言ってしまえば、モンテッソーリ教師であれば、教具の扱いや提供はできて当たり前なのです。ただ教具を提供すればいいのではなく、モンテッソーリ教育というのは、

  • ・本当の自由ってなんだろう?
  • ・本当の自己規律って何だろう?
  • ・主体性を育てるにはどうしたら良いのだろう?
  • ・みんなと同じことをするのは社会性じゃない。では、本当の社会性ってどんなことなんだろう?
  • ・何をしたらこのコミュニティに役に立つんだろう?
  • ・幸せな人を育てるにはどうしたら良いのだろう?


ということをしっかり考えていかなければいけないのです。

みんなに喜んでもらう前に、子どもが自分で「楽しい。集中できる。」「私は伸びてる。私はできる。」って実感できてから、初めて他の人の役に立ちたいと思うようになります。

自分が幸せではないのに人の役に立ちたいと思う人はいません。
自分が幸せだから、人の役に立ちたいというのが幸せ。


とにかく周りと同じことをやるということは社会性ではありません。

よく聞かれるのは「モンテッソーリをしていて、自分の好きなことばっかりやって、小学校行ってから大丈夫でしょうか?ついていけるでしょうか?」と聞かれるのですが、それは逆なのです。

自分が幸せだから周りとうまくやっていけるわけで、無理して周りに合わせることが社会性ではないと、私たちは考えています。


中澤:

本当にその通りだと思います。もう一度三浦先生の講義を聞けたようで幸せです。


三浦先生:

現場で全てを実践するのは難しいと言われますが、理想がないとどこにもいけないんです。


「本来のモンテッソーリ教育はこうなのだ」というところに立ち返っていかないと、違う方向にいってしまいます。


親としても、教師としても失敗は絶対にあるのです

大人が間違ってしまった時に「ごめんなさい、違っていました。」と言って謝りますよね。「子ども相手だからまあ、いいや。」という気持ちになってしまうと、どんどん子どもにとって役に立たない大人になってしまうし、邪魔をする大人になってしまうと思います。だから、間違った時は真摯に子どもに謝るべきです。


「私も自分が言っていることに責任を持たなくては、成長しなくては」と努力しています。例えば、学生さん一人一人を大切にすることも、自分もこのような講義をしてるから身につまされるところはあります。


「子どものことを真剣に傾聴するように」と言っているので、学生さんから「先生ちょっとよろしいですか」と言われた時に傾聴するように努力しています。

私も含めてみなさんそうですが、いつもいつもお話を聴けるわけではないかもしれませんが、何かチャンスがあったときに「あなたは私にとって大切な人だから、あなたの言っていることは時間を作って聴きます」という姿勢は大切だと思います。

子どもでも大人でも必要なことなのではないかと思います。

モンテッソーリ教育の「グローバル・スタンダード」

中澤:

最後に、この記事を読んでくださっている方はモンテッソーリ教育のスクールに通うことを検討してくださっている方や、すでにモンテッソーリ教育に関わっているモンテッソーリアンの方、また保護者の方がいらっしゃると思います。
その方々に対してメッセージをお願いします。


三浦先生:

私ども東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンターの特徴の一つは、AMI(国際モンテッソーリ協会)の組織の一部であるということです。

グローバルなモンテッソーリ教育のネットワークの中に位置しています。

その中で教師養成トレーナーが育てられて、そのトレーニングの基準を保たなければならない。私一人の思いと知識でモンテッソーリ教育を皆様に伝えているのではなく、海外の先生からも教えてもらっていますし、今でも勉強し続けてています。

国際会議に出席したり海外の研究会にも参加します。海外のトレーナーに試験や講演会をやってもらうことも行い、常に学び続けています。グローバル・スタンダードを維持することを意識しています。


国際モンテッソーリ協会のトレーニングセンターでは、ロンドンでも、東京でもボストンでも、同じ内容、同じレベルの講義が受けられます。世界中で同じ内容が受けられるのは、グローバル・スタンダードがあるからです。


だからこそ、世界のトレーナーのトレーナーズ会議を開催し、スタンダードを確立していく。そのような、きちんとした世界基準で教えられるモンテッソーリ教師資格を受けてもらえるのは東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンターの強みです。


国際モンテッソーリ協会(AMI)認定のディプロマ(国際資格)を取得できるトレーニングセンターは、日本には東京と福岡(0-3歳のAMI教師資格を出している国際モンテッソーリトレーニングセンター)の2校しかありません(※2023年「あきる野 モンテッソーリ トレーニングコース」開催)。

AMI認定の資格は全世界で有効で、取得した国に関係なく世界中でモンテッソーリ教師として働くことができます。

国籍・背景関係なく一つにつながれる

三浦先生:

東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンターでとったディプロマを持っていれば、AMIのファミリーの一員です。世界のどこのAMIトレーニングセンターでもウェルカムしてくれます。


世界の様々なところでモンテッソーリアンに出会います。皆さんも、例えば東京のディプロマを持っていると言えば、タイでも中国でもアムステルダムでも、世界のどこのトレーニングセンターでも見せてくれます。

中澤:

トレーニングセンターを見せていただけるのですか?


三浦先生:

はい。AMIファミリーはどこでもウェルカムだからコロナが落ち着いたら皆さん色々なトレーニングセンターへ見学に行って欲しいし、2023年8月にはバンコクで世界大会があるし、世界中のモンテッソーリアンと出会えます。

その時に友達が一気に増え、世界の国の人と会える。「子どもの命の援助、発達の援助をしたい」という志は皆、同じです。


中澤:

ぜひ、行ってみたいです。


三浦先生:

ぜひ、行ってみてください。みんなびっくりするくらい同じところを目指しています。文化がこんなに違うのに、いろいろな宗教があるのに、モンテッソーリアンの心はみんな一つなんです。

言語がわからなくても大丈夫。世界が広がりますよ。


中澤:

はい。世界のモンテッソーリ教育を見てみたいです。


本当に特別な話をお聞かせくださって、感無量です。三浦先生、今日は本当にありがとうございました。


いかがでしたか?3部構成で三浦先生のインタビューをご紹介してきました。モンテッソーリ教育をもっと知りたい、学びたい、という方はぜひ一度トレーニングコースの扉をノックしてみてください。きっと新しい未来が開くのではないでしょうか。

Trecceは、これからもモンテッソーリ教育についてさまざまな情報を発信していきます。

過去の記事

第1部:モンテッソーリ教育との出会いからトレーナーになるまでの軌跡
第2部:モンテッソーリ教育への想いと、家庭でのモンテッソーリ教育のあり方
第3部:日本のモンテッソーリ教育の課題点と読者へのメッセージ


三浦勢津子先生がトレーナーを務める、「東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター」の詳細情報はこちら。


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中澤有希
中澤有希
株式会社Trecce代表
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