インタビュー

<第2部>三浦先生が語るモンテッソーリ教育への想い~モンテッソーリ教育への想いと、家庭でのモンテッソーリ教育のあり方~

nakazawayuki

東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンターの代表を務め、
AMI3-6教師養成トレーナーの三浦勢津子先生に、Trecce代表中澤がインタビューを行いました。

全3部構成でご紹介しています。

第1部:モンテッソーリ教育との出会いからトレーナーになるまでの軌跡
第2部:モンテッソーリ教育への想いと、家庭でのモンテッソーリ教育のあり方
第3部:日本のモンテッソーリ教育の課題点と読者へのメッセージ

自分らしく伸びていけばよい

中澤有希(Trecce代表。以下、中澤):

三浦先生がモンテッソーリ教育に携わってきた中で、心に残った言葉はありますか?


三浦勢津子(AMI3-6トレーナー。以下:三浦先生):

たくさんあります。トレーナーを目指している時は、「東京国際(モンテッソーリ教師トレーニングセンター)を引き継いでいかなくては」というプレッシャーがあり、「静子先生のようにならなくてはいけない」と勝手に思い込んでいました。静子先生の存在が私の中でとても大きかったのです。


私が50歳を過ぎて准トレーナーになってから、イタリアに6歳から12歳のモンテッソーリ教育のトレーナーとして有名なバイバ・クミンズ・グラッツィー二先生のもとへ勉強に行った時のことです。私がグラッツィーニ先生に、「私はモンテッソーリ教師としてのスタートが遅いのです。」と言った時に、

「あなたは、今までの人生で他のことをやっていたのだから、それが強みよ!」
と言われました。


私はいろいろな仕事をしてから30代後半になり、やっとモンテッソーリ教育に出会えて、自分では回り道をしたという感覚がありました。静子先生がご年齢だったこともあり、「早くトレーナーにならなければ」という焦りもあったとは思いますが、「もっと早く、モンテッソーリ教師として始めておけば、もっと余裕をもって学べたのに」と思っていたのです。

でも、人にはそれぞれの道があるのだと、グラツィーニ先生に言われて思いました。そして、
一所懸命に生きていれば、人生において無駄はないのだ、とも思いました。


中澤:

その言葉がその時の支えになったんですね。


三浦先生:

支えというか、「私は私でよい」ということですよね。


静子先生にも、「私のようにならなくていいのよ。あなたはあなたらしく、AMIのトレーナーになればいい。」と仰っていただいて、静子先生と同じようにならなければいけないと自分で思っていたプレッシャーから解放されて背中を押してもらえました。


中澤:

それはモンテッソーリ教育の、子どもに対してのメッセージと通じるところがありますね。


三浦先生:

そうですね。子どもは一人ひとり違うし、先生もいろんな個性的な先生がいる。


個性は育てるものではなくて、尊重されるものだと思います。その人の一番良い面が出るような環境を準備し、そして適切な援助をする

それがモンテッソーリ教育であると思います。

「指導」ではなくその子らしく発達していくための援助

三浦先生:

ただ、間違ってはいけないのは、それぞれの教師の個性を尊重するべきですが、モンテッソーリ教師としての「基本」は守らなければならないと思います。

  • 子どもに対して真摯であり、愛がある。
  • 適切な環境を準備することができる。
  • 客観的な観察ができる。
  • 教える、訂正することよりも、「発達の援助」につとめることができる。


これは基本で、モンテッソーリ教師であればできなくてはいけないことです。その中で子どもも大人もその人がその人らしく開花していくことが大切であると思います。


中澤:

私も、三浦先生の講義の中で「その子がその子らしく発達していくための援助」という言葉がずっと心に残っています。先生たちは子どもに対してそういう気持ちなのですが、大人に対してもそういう心の持ち方ができるといいな、と思います。


三浦先生:

学生さんの中にも様々な素晴らしい個性があります。一人ひとりが自分の良さを生かして成長していける。コースはとても楽しい学びの場です。

大人が変わると、子どもたちが変わっていく

中澤:

先生はトレーナーになって一番よかったと思うことは何でしょうか?

三浦先生:

やはりモンテッソーリ教育を通して大人が変わっていくのを見ることが嬉しいです。

様々な年齢やバックグラウンドをもった方々、今の教育に対して何かしらの疑問を持った方々が、モンテッソーリ教育を学びたいと同じ場所に集まり、お互いに刺激やインスピレーションを与え合あいながら、子どもを通じて変わっていくところが素晴らしいですね。

まず大人が変革して変わっていかないと、教育現場は変わりません。


ですからトレーニングセンターが目指すのは、大人の改革。意識の改革です。


意識を変えていくと、人は変わっていきます本当に意識して努力していると、大人も変わることができます。私の授業だからということではなく、それはモンテッソーリ教育の持っている力であると思います。集まってくる人たちの中で意識が変わっていく。それを見ることは大変大きな喜びです。


「自分が自ら環境を整えることにより、周りの先生たちの環境に対する意識が変わった。また、子どもたちに対する自分達の見方も変わってきた。そして、子どもたちが変わり、自主的に考え、動くようになった。」と言うような言葉を学生から聞く時は本当に嬉しく思います。

そしてこれは、モンテッソーリ教育に世界共通で言えることですが、幼稚園の先生、保育士の先生でない人たちの熱意も目を見張るものがあります。

教育について、人間が育つことを深く熱く考えている人が集まってくることもモンテッソーリ教育の特徴ですね。

家庭でのモンテソーリ教育について

中澤:

私のように保育関係以外の分野にいた人や、モンテッソーリ・ペアレント(子どもがモンテッソーリ園に通ってる親)が学生として学ぶことがこれから増えると思うのですが、家庭でのモンテッソーリ教育のあり方について、どのようにお考えですか?


三浦先生:

私も元はモンテッソーリ・マザーです。モンテッソーリ・ペアレンツからモンテッソーリ教師になる人は多いですね。

ただ、私は、親が家で教具を提供するのは違うと思います。

子どものために、お母さんにはお母さんでいて欲しいし、お父さんにはお父さんでいて欲しい。モンテッソーリ教育をご家庭でやると言っても、他の子どもたちがいなければ、モンテッソーリの考えた社会的環境が成り立たない。異年齢の複数の子どもたちがいなければ本当の意味でのモンテッソーリ教育の環境ではないのです。

モンテッソーリ教育は教具さえ使えればいいのではありません。

教具を使っての活動は子どもの集団をもつ整えられた環境においてあり、ご家庭でやることではないと思います。教具は重要なものですが、それは社会的環境の中にあってはじめて生きてくるものです。

お母様、お父様たちにとっては、子どもとの関わり方を学ぶことの方が教具の扱い方を学ぶよりも大事。

  • ・どのように子どもに接したらいいのか?
  • ・どのように子どもの自立を助けたらいいのか?
  • ・どのように自分が子どもから自立したらよいのか?
  • ・子どもが自分の生きがいになってはいないか?
  • ・それぞれの人生の大切さとは何か?


コースで学ぶお母様方、お父様方はこういうことを考えるに至ります。
子どもの成長を邪魔しない、先回りしないというところで発達心理学を親御さんが学ぶことも有益だと思いますね。


中澤:

家庭でモンテッソーリ教具を使って、お母さんが子どもに教えるという情報を見ると、「そうしなきゃいけない」と思ってしまう親御さんも多いと思います。

でも、本来家庭では教具で教えるのではなく、子どもの成長を邪魔しないようにするというモンテッソーリ教育の心を取り入れていくというのが大事だと感じました。

家庭の中で、大事にするべきこと

三浦先生:

おすすめは、お父さんやお母さんと一緒にご飯を作ることや、お掃除をすること。また、何かを直している時などに、一緒にやってみることなどがとても良いと思います。

生活の中で子どもができるようなことをゆっくり見せてあげる。生きる力になるようなことを一緒にやると良いと思います。そういう時間がとても大切です。

そういう時、「よくできたね(評価)」ではなく、「ありがとう(感謝)」を子どもに伝えてみてください。

中澤:

そうですね。人間力みたいなところですね。勉強ができるなどではなく、身の回りの基本的なことができるということが大事ですね。


三浦先生:

あとは、興味のわくことを探してみるのも良いと思います。


友達のお嬢さんが小学生なのですが、ヒエログリフ(古代エジプトの象形文字)に興味があり、博物館に通って読んだり書けるようになったそうです。

そのように、子どもが夢中になることを観察して探してあげるといいですね。親がやらせたいものではなく「この子は何に興味があるのかな?」という観察が大事です。そして、トライしてみる。その子の興味のあることに集中することで何かにつながるといいですね。

うちの娘は石に興味があったので、アメジストとかタイガーアイとか、石の名前を覚えて集め始めたので、家族みんなで石が採れる採石場の近くにキャンプに行ったりしましたね。相当楽しかったようで、箱に仕切りをつくって分類したり、名前を調べたりして熱中していました。


中澤:

探求できるようなヒントを差し出すということですね。


三浦先生:

はい。特に小学校からですが、幼稚園の時から何かに夢中になることもあります。

子どもの興味に合わせて、博物館に行ったり図鑑を見たり。好きなことに集中することで何かが伸びることがあるので、興味があることを見つけてあげるといいですね。


中澤:

ありがとうございます。教具を使わなくても家庭でできることは本当にたくさんあるんですね。

続きは、「第3部:日本のモンテッソーリ教育の課題点と読者へのメッセージ」です。引き続き三浦勢津子先生のインタビューをお楽しみください。



第1部:モンテッソーリ教育との出会いからトレーナーになるまでの軌跡
第2部:モンテッソーリ教育への想いと、家庭でのモンテッソーリ教育のあり方
第3部:日本のモンテッソーリ教育の課題点と読者へのメッセージ


三浦勢津子先生がトレーナーを務める、「東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター」の詳細情報はこちら。


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株式会社Trecce代表
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