運動の洗練の敏感期とは?じっと座れない?動くことは脳の発達に不可欠!
運動の洗練の敏感期とは、子どもが自分の思った通りに体を動かせるようになるために、積極的に体の動きを洗練させる時期のことです。
モンテッソーリ教育で言う「運動」とは、体を大きく動かすダイナミックな動きだけではなく、指先の細かな動きや目の動きまで、全ての動きを「運動」と呼びます。
「その時期の子どもは一体どんな様子なの?」
「大人はどのような対応をしたら良いの?」
そんな声にお答えするために、運動の洗練の敏感期について、わかりやすくご説明します。
「敏感期とは何か?」について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
「運動の洗練の敏感期」とは?
運動の洗練の敏感期とは、自分で自分の体や指先の動きをコントロールして生活に必要な基本的な動きができるようになるためのもので、動くことに強い興味を示す時期のことです。
運動には、階段の登り降りやジャンプといった、体全体を使った大きな動きやバランス感覚と(粗大運動)、シール貼りやひも通し、コップに水を注ぐ時などの力加減を調整するといった、手と指先を使った細かい動き(微細運動)があります。
それぞれの運動は脳の発達に直結しているので、思考力や記憶力、行動力、判断力などにも影響してきます。
この時期の子どもが”何もせず”にじっと椅子に座っているのは不可能と言って良いでしょう。おとなしく座っていても、手は忙しく何か活動しているはずです。
「もっと動きたい」「手を動かしたい」「正確に動かしたい」「繰り返したい」という思いが強く、同じ動きを何度も繰り返し行います。そうすることで、日常生活で必要な動きや物の操作をマスターし、暮らしに適応していきます。
運動の洗練の敏感期が現れる時期
10ヶ月〜4歳頃まで続く
運動の洗練の敏感期は、生後10ヶ月〜4歳ごろまで続く敏感期です。
ずり這いやハイハイを覚えた子どもは、自分の掴みたい物がある場所まで全力で動きます。また、おもちゃを握る、落とす、引っ張るなど、手を使った動きを活発に繰り返します。歩行が安定してきた子どもは、自分と同じくらい大きなイスを持ち上げて運んだり、お母さんのバッグや荷物を持ちたがる時期もあります。
これらは、大きな動きやバランス、そして手を使った細かな動きや力加減を練習するための行動です。
そして年齢と発達が進むにつれて高度な動きへと上達させていき、自立して動けるようになることに喜びを感じます。
ピークは2歳半頃
運動の洗練の敏感期のピークは2歳半頃です。
細い線の上をはみ出さずに歩いたり、ちょっとした段差にもすぐに登ってジャンプする子どもを見たことがありませんか?
また、人間は両手をコントロールすることが非常に重要です。指の動きや力加減をマスターするために、子どもは細かな作業にもとても集中します。
シールを剥がして貼ったり、電気のスイッチを押したり、ビンの蓋を開けたがったり、ペンを持ってそこらじゅうにぐるぐる落書きしたり・・・。
大人からしたらイタズラに見えてやめさせたくなりますよね。しかしこれは手を使うことで脳の発達を促し、自立して動けるようになるための立派な練習をしている姿なのです。
子どもの様子は?
敏感期の現れ方には個人差があるので、年齢はあくまでも目安です。それぞれの発達によりその時期だけの特徴を見せてくれます。
新生児期
脳が自分の身体を動かそうとして指令を出しても、まだ上手く動かすことができません。
生後10ヶ月〜
脳の指令に従って身体を動かせるようになると、動きが活発になっていきます。
ハイハイなどで行きたい方向に進んだり、手を使ったり、指先で小さい物を摘んだり押したりするような動きも増えます。
■特徴 ・抱っこやベビーカーを嫌がる。 ・階段やソファーによじ登る。 ・おもちゃのスイッチ、リモコンのボタンを押す。 ・小さなものを指で掴もうとする。 ・ティッシュを引き抜く。 |
1歳頃〜
二足歩行ができるように転んでも繰り返し立ち上がって挑戦したり、つかむ・引っ張る・落とすなどの一つ一つの動きに集中して、活発になります。
■特徴 ・階段を登りたがる。 ・音楽にのって体を動かす。 ・おもちゃ箱からおもちゃを全て出してまた入れる。 ・ドアノブを回す。 ・ペンでぐるぐると円を書く。 |
2歳半頃〜
運動の洗練の敏感期のピークです。
疲れを知らずに、集中して同じ遊びを繰り返し行います。体と手を動かして、環境の中にあるものを実際に触ったり動かしたりしながら物事を理解して、日常生活の中で必要な動きをどんどんマスターしていきます。
■特徴 ・服や靴下など自分で着替えようとする。 ・ボタンやファスナーなどに集中する。 ・石や積み木を積み上げる。 ・ちょっとした段差に登ったり、ジャンプする。 ・重いものや大きなものを持ちたがる。 |
3歳頃〜
これまでに獲得した一つ一つの動きを組み合わせて、徐々に長い工程の動きができるようになっていきます。
■特徴 ・子どもサイズのハサミが使えるようになる。 ・のり貼りやシール貼りなどの制度が上がる。 ・線の上やへりの上を歩く。 ・注意深くコップに飲み物を注ぐ。運ぶ。 |
4歳頃〜
歩いたり、走ったり、ジャンプするなど、体を使った動きのバランスが安定します。手の動きの精度も高まっています。
■特徴 ・箸で小さな食材も掴めるようになる。 ・ペンで字を書けるようになる。 ・階段の登り降りがスムーズになる。 |
大人が心がける、3つのこと
子どもが身につけようとしている運動を、最大限サポートするためにこの時期に大人が心がける3つのことをご紹介します。
1. 自由に動ける安全な環境をつくる 2. 思う存分活動する時間を確保する 3. 子どもサイズの道具(日用品など)を用意する |
一つずつ詳しく説明していきます。
1:自由に動ける安全な環境を作る
安全を考慮した上で、子どもが自由に動ける環境を整えてあげましょう!
大人の世界は、子どもにとって危険がたくさんあります。思わぬ事故やケガが起こらないように、危険なものや触られたくない物はあらかじめ取り除き安全に動ける環境か確認します。
子どもが興味を持ってから「だめ」と言って取り上げるのでは子どももがっかりしてしまいます。そのため、子どもが届かない場所はもちろんですが、できるだけ見えない場所に保管することも重要です。
家の中は、子どもが触っても良いもの、動いても安全な場所に整えてあげましょう。
■ポイント! ・ガラス製品や家電製品、PC/スマホ、充電器などのコードがないか。 ・刃物、薬品などは手が届かない場所に保管。 ・コンセントの差し込み口を塞ぐ。 ・テーブルクロスを外す。(引っ張ると危険) |
2:思う存分活動する時間を確保する
満足するまでできるように、なるべく時間をつくってあげましょう!
運動の洗練の敏感期にいる子どもは、集中して何度も同じことを繰り返すことでその動きを洗練させています。遊ぶ時や出かける時は、大人が思っている以上に子どもは何度も立ち止まったり同じ行動を繰り返したりするので、なるべく時間に余裕を持つことが大切です。
時間に余裕がないと、せっかく子どもが自分で上着のファスナーを閉めようとしていたり、自分で靴をはこうと頑張っているのに、ついつい大人がパパッとお世話してしまいますよね。
子どもが自分の手を動かすチャンスを奪わないよう、なるべく子どもの行動を見守る時間が必要です。
■ポイント! ・予定を詰め込み過ぎない。 ・余裕を持って行動する。 ・大人がお世話し過ぎない。 |
3:子どもサイズの道具(日用品など)を用意する
子どもサイズの用具や日用品を用意してあげましょう!
普段の暮らしは全て大人用のものなので、子どもの手や体に合わず上手に使えないのは当然です。道具の操作が難しすぎると運動の練習にならないどころか、自信や意欲をなくしてしまいます。
発達に合った難易度の物を用意することで、もっとやりたい!もっと上手になりたい!と繰り返しの練習に繋がります。
■ポイント! ・子ども用のイスと机。 ・洗面台やトイレなどに踏み台を置く。 ・子どもサイズのハサミや文房具など。 |
【まとめ】運動の洗練の敏感期を楽しもう!
運動の洗練の敏感期は、10ヶ月頃から4歳頃まで続き、自分の思うように身体をコントロールして日常のあらゆる動き方を身につける時期のことです。
大きな動きだけでなく、手の運動を洗練させる時期でもあり、繰り返し行うことで色々な動きが自分でできるようになっていきます。
初めは抱っこでしか移動できなかった赤ちゃんも、どんどん自分の意思で体を動かせるようになって、自立していくのは神秘的なことですね!
その成長の過程を一緒に楽し見ながら、この時期に大人が心がける3つのことを意識してみてください。
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